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諸岡 聡; 川崎 卓郎; Harjo, S.; 中田 伸生*; 塚田 祐貴*
no journal, ,
パーライト組織を含有する鋼は、熱処理等でラメラ間隔を変化させることで、強度-延性バランスを制御することができるため、鉄道レール、橋梁用鋼線、スチールコードなどの構造金属材料として利用されている。中田らは、パーライト組織の不均一性がパーライト変態中に形成される内部(変態)応力に起因していると考えており、種々のパーライト鋼において、ミクロ組織の不均一性がもたらす力学特性の変化と内部応力の関係について報告している。しかしながら、室温における内部応力は、変態応力と熱応力が重畳した値となるため、変態応力のみの評価方法が必要である。本研究は、中性子回折法による熱処理制御中その場測定を用いて、パーライト変態中に形成される変態応力の実測を目的とする。その結果、わずか40秒間しか存在しないパーライト変態中のフェライトおよびオーステナイトの格子定数変化を観測することに成功し、パーライト変態の進行に伴い、フェライトの格子定数は減少し、オーステナイトの格子定数は増加することを明らかにした。この要因は、フェライト変態した際の体積膨張による静水圧応力の発生とその反力であると理解できる。したがって、このようなフェライトとオーステナイト間における弾性ひずみの不整合は、パーライト変態時の内部応力の起源になると予想される。
諸岡 聡; 川崎 卓郎; Harjo, S.; 中田 伸生*; 塚田 祐貴*
no journal, ,
パーライト鋼は、加工・熱処理等でラメラ間隔を変化させることで、強度-延性バランスを制御することができる。そのため、鉄道レール, 橋梁用鋼線などの構造金属材料として幅広く利用されている。一方で、中田らは、パーライト鋼の強度特性が共析変態で生じた内部応力(室温)と相関があることを発見し、加工・熱処理による新たなミクロ組織制御の可能性を示唆している。しかしながら、共析変態中に生じる内部応力は、共析変態温度で計測する必要があり、これまで実測され、定量化された例はない。本研究は中性子回折法による熱処理制御中その場測定を用いて、共析変態中に生じる内部応力の実測とその定量化を目的とする。得られた結果としては、873Kにおけるパーライト組織中のセメンタイトのユニットセル体積変化と熱時効時間の関係から、熱時効の進行に伴い、セメンタイトのユニットセル体積が増加することが分かった。すなわち、これは共析変態に起因した内部応力の影響で圧縮応力状態となったユニットセル体積が熱時効の進行に伴い、緩和している様相を現していると考えられる。また、本結果の妥当性は、予め180ks間、熱時効したセメンタイト単相のユニットセル体積変化から検証している。したがって、この現象の観測は、これまで報告されていない新たな成果の一つであり、本結果を用いることで、共析変態に起因した内部応力を実験的に推定することが可能となる。本発表では共析変態に起因した内部応力を実験的に推定した結果について報告する。
梅田 岳昌*; Zhang, Y.*; 宮本 吾郎*; 古原 忠*; 諸岡 聡
no journal, ,
パーライトは、鋼の共析変態によって得られ、冷却によって生じた駆動力は炭素の拡散や、フェライト/セメンタイトラメラの形成、パーライト/オーステナイト界面の移動に消費されると考えられてきた。実際には、パーライト変態時に生じるひずみや、成長先端における合金元素の分配や界面偏析によっても駆動力が消費され、より複雑なエネルギー散逸が起こっていると推測される。エネルギー散逸によって界面の移動に寄与できる駆動力が減少し、成長速度も遅くなるが、その定量的な理解がパーライト鋼の組織制御において重要である。しかし変態kineticsに影響を及ぼすエネルギー散逸因子の検討はパーライト変態の場合にはあまり行われていない。そこで本研究では、Fe-C-Mn合金をモデル系として選択し、パーライトの成長界面の移動時におけるエネルギー散逸について定量的評価することを目的とした。
梅田 岳昌*; Zhang, Y.*; 宮本 吾郎*; 古原 忠*; 諸岡 聡
no journal, ,
共析変態によって得られるパーライト鋼は、フェライトとセメンタイトが層状に積層した微細なラメラ組織を有し、鉄道用レールやピアノ線、橋梁用ワイヤなどに幅広く用いられる重要な鉄鋼材料である。強度特性と大きく関係するラメラ間隔は、パーライト変態の駆動力および成長速度に依存することから、その制御にはパーライト変態の熱力学的な理解が重要である。パーライト変態の駆動力は炭素拡散、界面移動に伴う摩擦、ラメラ界面形成の3つの素過程に消費されると考えられてきた。しかし近年、フェライト/セメンタイト間の格子ミスフィットによって変態時に弾性ひずみエネルギーが蓄積することで、駆動力が消費されることが報告されている。また合金元素を添加すると、界面近傍における拡散や界面偏析が起こることで実質的な変態の駆動力もさらに変化すると考えられる。変態挙動に影響を与えるこれらの現象には未だ不明点が多く、特に成長界面における合金元素の分布を直接観察した例が少なく、さらに上記因子の効果を定量評価した例もほとんどない。よって本研究では、Fe-C-Mn合金のパーライト成長時の駆動力消費を様々な組織解析技術を用いて解明することを目的とした。その結果、Mn添加材では、/界面でのMn偏析によるソリュートドラッグ効果が最も駆動力を消費する大きな要因であることが示唆され、界面移動に伴う摩擦によるエネルギー散逸や、その場中性子回折実験より評価した変態ひずみの効果など他因子も少なからず影響していることが判明した。